《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!

黒騎士の転身



 ふとレオヴァルトの脳裏を少年の明瞭な声がかすめた。
 声変わりしたばかりの、溌剌とした響きをはらむ声だ。

 ——いつまでも放浪してる場合じゃないでしょう。
《弱き者を救いたい》っていうご意志は立派だと思いますけど、レオヴァルト様が弱者にばっかりかまってるから良い縁談が遠のくんですよ? 二十五歳なんてもういい歳《トシ》なんですから、そろそろ帰って立派な後継《あとつぎ》を産んでくれる女性《ひと》を探したらどうですか。いくら『その薫風に靡かぬ花はない』なんて言われる美丈夫でも、そのうちオッサン化して若いご令嬢が寄り付かなくなりますよ〜。

 大人顔負けの生意気を言うケイツビーは、まだ幼さとあどけなさの残る十六歳。帯剣の儀を終え近衛騎士認定を受けたばかりだ。
 剣技も体術もまだ未熟で、教えてやりたいことが山ほどある。

 ——無駄口を叩くな、ケイツビー。レオヴァルト様が《《王城にいられない理由》》をお前もよく理解《わか》ってるだろう。お妃探しはアルハンメルの王位継承問題が落ち着いて、王太子殿下が王位を継いでからだ。ですよね、レオヴァルト様?

 レオヴァルトよりも齢十ほど年嵩なものの、ザナンザは有能な護衛騎士だ。
 貴族出身の彼は結界を張れるほどの魔力を持つ。レオヴァルトの巡業をサポートするには充分すぎるほどの実力を見せてくれていた。

 そして——幼い頃からレオヴァルトのそばで従者として育ち、三人の中でも誰よりレオヴァルトの意思を汲んでくれていた、ゲオルク。
 


 
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