《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
あの日も愛馬の背に揺られながら、秋風になびく麦穂のようにおおらかに微笑《わら》っていた。
——答えは俺が教えてやろう……『薫風は吹かぬ』だ。
レオヴァルト様に結婚のご意思はない。妻にかまっている時間と労力があるなら、放浪しながらも弱者を救いたいと仰るのが、我らが仕えるレオヴァルト様だからな!
豪快な彼の声がすぐそばで聞こえたような気がして、レオヴァルトは寂しげに微笑んだ。
「その通りだゲオルク……だが私がその意思を折る日が来るなんてな。おまえが聞いたら、情けない主君だと微笑うだろう」
ユフィリアというあの聖女は、傷ついた者を救う特別な能力を神から授かりながら、気乗りがしないだのの理由で求める者たちの治療を拒むと言う。
「どれほど私が欲しいと望んでも得られぬ治癒の力だ、なのに——」
レオヴァルトの秀麗な面輪が嫌悪に歪んだ。
「聖女という立場でありながら、そんな傲慢が許されていいはずがなかろう……!」