《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
廊下の光が逆光になっていて顔はよく見えない。
構わずに歩むと、黒い影がユフィリアに向かって悠然と歩き出した。
コツン、コツン……いかにも重そうな靴音を響かせながらユフィリアに近づいてくる。

——誰……?

よどみなく続く靴音と見えない人影に、さすがのユフィリアも怯んでしまう。

洋燈の明るみの下に差し掛かれば、黒い影が一転してその姿を鮮明にした。
背まで伸ばした黒灰色《ダークグレイ》の髪を首の後ろでざっくりと束ねただけの無骨そうな男が、ユフィリアの目の前に立ちはだかる。
伸びた前髪に隠れた双眸はくすんだ黄金色《きんいろ》で、真上からぎろりとユフィリアを見下ろしている。

「私に何かご用かしら?」

いつものように去勢を張り、ユフィリアは負けじと男の双眸を睨みつけた。


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