《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
レイモンド卿の脅しに屈する気はない。だが従者の命の手綱を握られているのは確たる事実だ。
——そなたの稀なる魔力とその美貌、気に入った。
手段は選ばぬ、聖女ユフィリアを手なづけ夫となれ。交わりの効果でグラシアの強大化が叶えば、そなたの仲間二人を解放する。神の御名《みな》において約束しよう、そなたが私の望みを叶えるまで、彼ら二人に手は下さぬとな。
依然として彼らの居所《いどころ》は掴めず、どんな境遇を強いられているのかすら知り得ない。
——そなたほどの優れた術者なら教会に張った結界を破るなど容易《たやす》いだろう。逃げるのは自由だが、残った二人は異端として斬首し、公衆の場に死肉を吊るして獣に喰わせよう。死に際の尊厳すら奪われた彼らは逃げたそなたをさぞ呪うであろうな。
レオヴァルトは苦々しげに眉を顰め、奥歯を噛みしめる。
手のひらを額に当てて伸びきった前髪を乱暴に掻き上げた。そのまま腕を伸ばし、真新しい騎士服をつかんで握りしめる。
「打開策を見つける……必ず。だから少しだけ耐えてくれ、ケイツビー、ザナンザ……!」
꙳ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ꙳
まばゆい朝日が満ちる回廊は、いつになく色めきだっていた。
欠伸を必死でこらえながら歩くユフィリアを、前方を行く聖女や騎士たちが振り返りながら見ている。