《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
月夜の女神
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教会に住まう者たちがおおよそ寝静まった、深夜一時。
ギン……!
金属音に似た音が耳に届いたのを確かめて、ユフィリアは寝台に横たえていた身体をすっくと起こした。
あの不快な音の正体は教会の正門に結界が張られる音で、明朝五時の時報を聴くまで、一般人は夜中に教会を訪れることができなくなる——同時に、中の者たちが外に出ることも。
正門にまで結界を張るのは門番を休ませるため、というのが表向きの理由だが、実際のところは動ける人員の少ない夜間は一般人を遮断して、教会に多額な寄付をする金持ちの都民や貴族の緊急事態に備えて上級聖女の手を空けるためだとユフィリアは知っている。
長い睫毛に縁取られた、マリンブルーの宝石をはめ込んだような瞳はぎんぎんに冴えていた。眠い目をこする朝とは真逆に。
「……よしっ!」
気合いを口に出せば、ぴん、と糸を張るように《戦闘態勢》のスイッチが入る。
薄い夜着のまま背筋を伸ばすと、腹の前に広げた片手のひらに意識を集中させた。