《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!

『だいじょうぶだよ。もし襲われたら《《この姿》》にもどって、逆に襲って牙で切り裂いてあげる』

 舌っ足らずな声でなかなか恐ろしいことを言う。

「襲うなんてダメよ、魔獣への嫌悪感を強めるだけ。あなたみたいな優しい魔獣だっていることを、人はもっと知るべきなの」

 雲隠れしそうな月を背負って夜空を駆けぬける銀狼の背中を、ユフィリアはそっと撫でた。

 人々は、ただ魔獣だと言うだけで大騒ぎをし、殺そうとする。恐ろしい見かけをしていると言うだけで判断を下し、その本質を《善》と《悪》との二つに分類しようとする。
 魔獣にだって人と同じくらい繊細な《感情》があって、ポメラのような優しい子もいるのだ。

『わかった。人間に襲われても何もしない。もしぼくが怪我したら、ご主人さまに《《また》》治してもらう。初めて会ったあの日みたいに、治して元気にしてもらう……!』

「ふふ、治すのは構わないけど、素直でかわいいポメラに危ない時に取るべき、最っ高に有効な手段を教えてあげる。それはぁ……」

 ポメラがふんふん、と鼻を鳴らす。




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