《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
『ご主人さま。ぼくね、今日はすごーく頑張ったんだよ。いっぱい病気の人、見つけたの。怪我して困ってる人たちも見つけたよ。ねぇ、ほめてほめて……!』
ユフィリアが「ポメラ」と名付けた銀狼種《ぎんろうしゅ》の魔獣は、男とも女ともつかない幼子《おさなご》の舌っ足らずな声で甘えてくる。ポメラ本人いわく『雄《おす》』の分類だそうだが。
「そっかぁ、よしよし、偉い偉いっ」
背中を優しく撫でると、ポメラは嬉しそうにもふもふの被毛を震わせる。
「でも、いくら昼間はただの子犬の姿してるからって油断しちゃだめよ? 貧民街ってところは、普通じゃ想像できないような乱暴なことする人だっているんだから……」
病や怪我で弱っている者は問題ない。
けれど『飢え』という残酷な渇きゆえに動物を捕まえて食べたり、生き延びるための苦悩と苛立ちを弱者にぶつけたりする輩も多いのだ。
かく言うユフィリアも、人助けをしているはずが『偽善者』と罵られ、ナイフで切りつけられた。幸い——と言うか、聖女の力ですぐに傷は治癒できたのだが。