《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
ユフィリアの眼裏《まなうら》にはいつも、悪夢の中で『お前のせいだ』と群がる赤黒い屍があった。幼さのせいにして「知らなかった」と、もう理由づけなどしたくはない。
——自分にしかできないことを、精一杯やる。それでも許されないのなら、グラシアを死ぬほど使って使い尽くしてから、この命をくれてやる。
倒れそうなほど疲弊しても、暁を見る頃までには教会に戻らねばならない。
教会に張り廻らされた結界の抜け穴を見つけたのは、敬愛する大司祭様のおかげだ。
——あのモップみたいに垂れ下がってる眉毛がかわゆいのよね。
大司祭様が結界の抜け穴を使っているところを《《たまたま》》目撃しなければ、こんなふうに教会を出入りするのは不可能だったろう。
——まぁ……あの時は大司祭様の後を《《つけて》》たって、言えなくもない……けど? だってお一人でいらっしゃるとこ初めて見たんだもん。よぼよぼの足取りで、一人きりで転んじゃわないか心配にもなるでしょ、そりゃあ♡
ユフィリアは大司祭様の見守りの幸福な機会を与え賜うた《神という名の見えない存在》に心から感謝した。