《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
私は騙されない
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「ユフィ姉さまぁー!」
くらくらする頭を抱えながらユフィリアが食堂に降りて行くと、見習い聖女のナディアがグリーンの大きな瞳をくりくりさせながら駆け寄ってきた。
ユフィリアに憧れている、なんて奇特な事を言うナディアは、明るい栗色の髪をユフィリアと同じツインテールに結えている。そんなナディアが妹のように可愛く思えて、ユフィリアも日頃から気にかけているのだ。
「交流会、お疲れ様でしたっ。姉さまと一緒に食事がしたくて待ってたんです!」
「ナディア……お願いだから……大きな声を出さないで。頭痛がするのよ」
「頭痛って大丈夫ですか? そのくらいなら私でも治せるかもっ」
言うが早いか、まだ身長の低いナディアが精一杯背伸びをして「えい!」と手のひらを翳してくるのを、ユフィリアは優しく制した。
「ありがとナディア。でも遠慮しとくわね。街の人が訪ねて来るかもしれない、グラシアはいつでも大事に取っておかないと」
あっ、と何かに気づいたような表情《かお》を見せたあと、微笑んだナディアはこくりと頷いた。
「ユフィ姉さまのそういう真摯なところ、尊敬しちゃいます! それに——」
胸の前で祈るようにして両手を組むと、頬を茜色に染め、意味ありげな上目遣いをユフィリアに向けてくる。