《新作》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
「お……おふたりって、誰と誰のことかしら……」
「もちろんユフィ姉さまとレオヴァルト様です」
きょとんと目を丸くしたナディアが平然と言う。
ユフィリアとレオヴァルトは婚約関係にあるのだから、ナディアの想像はもっともだ……もっともだけれども。
「姉さまも、結婚したら他の先輩聖女さんたちと同じように中央大聖堂《ここ》を出て行くんですよね? 寂しくなっちゃうな……。あっ、お相手が貴族出身の聖騎士様だと二人で領地に戻られるにしても、黒騎士のレオヴァルト様って没落貴族なんですよね? 帰るお家ってあるのかな……」
ナディアは顎に人差し指をあてながら心配そうに小首を傾げて見せる。
「あのねナディア。婚約したからって、絶対に結婚するかって言えばそうじゃない場合だってあると思わない? 成婚式までに何らかの理由で婚約破棄ってことになるかも知れないし」
何も知らないナディアのおかげで、不本意ながら昼間の交流会を思い出してしまう——それはユフィリアの頭痛の理由でもあるのだが——レオヴァルトのユフィリアに対する態度が、明らかに《《おかしかった》》のだ。
「ユフィ姉さまったら、そんなに照れなくてもっ。レオヴァルト様ってば、暇があったらユフィ姉さまのこと見てるんだもの。愛されてるっていいなぁ……憧れちゃいます。私も十六になって聖女認定受けたら、すぐに恋人が欲しいです!」
「ナディアの夢を壊すようで悪いけど、私たち、そんなんじゃないのよ」