《連載中》波乱の黒騎士は我がまま聖女を蕩けるほどに甘やかす〜ループ二度目なので溺愛は拒否させていただきます!
はっ、と我に返ったユフィリアは幾度となく首を振った。
「ううん、なんでもない。あの黒騎士の話をしていたわね? ナディアが思うほど善い人かどうかわからないわよ。私もね、あの人のことはまだよく知らないの」
えっ、とナディアが丸い眼を更に丸くする。
——綺麗だなんて思ってもないこと言っちゃって……! またレイモンドに諭されでもしたんでしょう。優しい言葉で手懐けて、とっとと結婚を承諾させろって。
そう思えばなおさら、根拠もない褒め言葉が気味悪く思えてくる。
——子供たちへのふる舞いだって演技かもしれないじゃない。ナディアや何も知らない無垢な子たちに好印象を植えつけて何がしたいのかしら。あの悪魔《レイモンド》の手下のくせに。善い人を装ったって、私は騙されないんだから……。
食事を終え、日が落ちで暗くなった廊下をナディアととも歩いていた時だ。
「ぁ……」ナディアが声を漏らしたので顔を上げれば、聖女たちの寄宿舎の入り口でイザベラと彼女の取り巻きらがたむろしているのが見えた。