晩夏に出会う線香
Prologue
「ヒューーーン…ドォォォンッ」
ある河川敷の近くから、花火の音がする。
遠くからでも聞こえる、打ち上げ音と観客の歓声。
みんな、毎年開かれる花火大会が楽しくて仕方ないみたいだ。
少し苦笑してしまう。
離れの河川敷にいるのは、私ただ一人。
真っ暗の中、カバンからある物を取り出した。
それは細長くて、手持ちがペラペラの紙切れで出来ている手持ち花火。
そう、線香花火。
一本を手に持つと、ライターでシュボッと火を付けた。
「ジジジ……」
線香の匂いが鼻をくすぐった。