晩夏に出会う線香
首を傾げる彼氏の胸ぐらを掴んだ。
「私は、いつそんなことお願いした!?してないでしょ!勝手にカッコつけんな!バカ!私はね…真くんのこと…好きなんだよ。勝手に置いてかないでよ……」
涙が溢れて止まらなかった。
何度拭っても、永遠と流れ出てくる。
すると、頬に温かいものが当たった。
真くんの、指だった。
「あぁ、そんな泣いたら顔ぐずぐずになっちまうで」
「だって……さ」
「蛍、ありがとうな。俺ばっかがずっと片思いしとるんやないかって心配したんやで。すぐ別れ話承諾するし。もうちょい嫌がったっていいやん」
「嫌がってもする気だったでしょ」