晩夏に出会う線香
「せっかく屋台あるんやし、どれ食べるん?」
「う〜ん、それより行きたい場所があるの」
「行きたい場所?」
「うん」
首を傾げる彼に、私はクスッと笑った。
「ここか?」
「そうだよ」
彼と一緒に行きたかった場所。
それは、花火大会の外れにある河川敷だった。
ここには誰もいなくて、静かだった。
「こんな誰もおらへん場所に、一体なにしようって言うん?」
不思議そうにしている彼をよそに、私はカバンからある物を取り出した。
「これだよ」
「線香花火?」
「そう、これを一緒にしたかったの」
すると、真くんはクスクスと笑った。
「ハハ、蛍らしいわ」
「ほら、いいから持ってよ」
「はいはい」