《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
大小十数国を纏めあげるオルデンシア帝国の帝都は、昼夜を問わずに馬車を走らせたとしても三日はかかる。
まだ一度も行ったことはないけれど、物語よりもきっとはるかに豪奢で素晴らしいのだろう。
蝶にでもなれたら、飛んでいけたかも知れない。
「はあ……」
傷だらけの両手を光に翳して見つめてみる。
セリーナは数日前に十九歳の誕生日を迎えた。来年はいよいよ行き遅れのレッテルを貼られる二十歳になる。
小さい頃の夢は『大好きな人と結婚すること』。
平凡だけれど、この小さな田舎の村でつつましくも穏やかな家庭を築くことが、何よりの幸せだと思っていた。
セリーナの両親のように、優しい夫と仲睦まじい夫婦になることが。
——私は何にもなれなかった
おそらくこの見た目の醜悪さでは、母のように夫に愛される妻になることなど叶わないだろう。