《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
夕方、畑仕事を終えて家に入ると、 戸口に娘の姿を見た母親が炊事の手を止めた。
「ねぇセリーナ、聞いて。宮廷からね、おふれが来たのですって。使用人の公募が今年も始まったそうよ!」
毎年この時期になると決まって母親のイリスがソワソワし始める。
そしてセリーナは苦悩する……どうやってこの母親の気持ちをなだめようかと。
「あなたはずっと帝都に憧れてきたでしょう? 今年こそ思い切って出願してみない?」
——お母さんは、毎年同じことの繰り返し。
私なんか……『ガイム』の私なんかが、採用されるはずがないじゃない。
せめてお母さんみたいに美しく生まれていたら、この人生だって違っていたかもしれないのに。
美しい両親、美貌に恵まれた弟。
なのになぜ、私だけが……こんな。