《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
自分でも大嫌いな、この陰鬱で卑屈な想いにまたとらわれてしまう。全力で払拭し、母親にはいつものように精一杯の笑顔で応じた。
「あれからまた一年が経ったなんて、早いわね」
母親に暗い顔は見せたくない、絶対に。
心配するから。
ただでさえ母親のイリスはセリーナの惨めな容姿を気に病み、腫物に触るように扱うのだから。
——笑わなければ。
いつも笑顔でいなければ……いつも、どんな時でも。
ほんとうの気持ちを悟られないように。
「ほら、またそうやって笑ってはぐらかす。一度でいいから真剣に考えてみて? ねっ?」
ああ、それから……と、イリスは机の上に置かれていた封筒を手に取り、セリーナに渡した。
「さっきアベルが持って来たのよ。あなたに読んで欲しいって」