《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜

その日はすぐにやってきた。
農作業を早めに切り上げて家に帰る。
村いちばんの美青年アベルと、村いちばんの醜悪な自分とがふたりきりで会うなんて、やっぱり信じられない。

——本当に来るのかしら

(いぶか)しみながらも身についた泥を落とし、身だしなみを整える。
セリーナだって年頃の女性の端くれだ。

「……やっぱりひどいわね」

鏡に映る自分の姿に愕然(がくぜん)とした。

昨夜は緊張で眠れず、目の下にクマができてしまった。
唇はカサカサ。乱れ落ちた髪を結い直すけれど……真っ直ぐな髪はきちんと結っても途端にパラパラ落ちてきて、綺麗にまとまったためしがない。



< 15 / 77 >

この作品をシェア

pagetop