《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
——私の、秘密?
「村に伝わるあの伝承。君の髪と瞳の色はその『証』だってこともね」
アベルがいったい何の話をしているのか、セリーナにはさっぱりわからない。
アベルが言う《伝承》とは、何なのだろう。
セリーナが顔を上げたそのとき。
複数の女性の高笑いが薔薇の茂みの中に広がった。聞き覚えのある若い女性たちの声は、セリーナとアベルがいるほうに明らかに近づいている。
——こんなところを誰かに見られたくない!
反射的にアベルの胸を押して遠ざけたのと、セリーナが知る女性たちが茂みを割って歩み出たのがほとんど同時だった。
「もうそのへんでいいわよ! アベル」
村で一番の器量良し、エライザ・ブランディンが、いつも彼女にくっついている取り巻きの子たちを引き連れて立っている。
それは——セリーナが誰よりも関わりたくない人物その人に違いなかった。