《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
失望
——エライザが、どうして……っ
アベルに抱き寄せられたところを見られたのではないか。
そんな不安が押し寄せて血の気が引き、指先がすっと冷たくなる。
「押しがちょっと弱かったような気もするけど、まあいいわ」
敵意に溢れた目でセリーナを見下ろすエライザを横目に、アベルはようやく顔を上げてみせる。
「アベルったら、あなたのその眼をキレイだって言ったのよ?! この私を差し置いて。だからアベルにお仕置きをしてあげたの。そうよね? アベル!」
エライザは戸惑いを見せるアベルの腕を組み、甘ったるい視線を彼に向けている。
取り巻きの子たちはセリーナを見ながらクスクスと含み笑いを繰り返していた。
「私とアベルは付き合っているの。それなのに彼、あなたの気味の悪い眼《め》を、本気でキレイだなんて言うのよ!? だから手紙を出させて、抱きしめるところまで漕ぎ着けたら許してあげることにしたの」