《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜

いきなり飛び込んできたセリーナの剣幕に、その場にいた者たちが一斉に目を向ける。

「おや、セリーナ?! 君が役場に来るなんて珍しいじゃないか。出願書類って……」
「宮廷に、出すものです」
「使用人公募のアレだね? ちょと待って」

小さな丸眼鏡をかけ直しながら、白い口髭を蓄えた物腰の柔らかそうな村長は机に積まれた白い封筒の中から一枚を取り、セリーナの震える白い手に差し出した。

「書けたら持っておいで。三日後の夕刻が期限だ、遅れないようにね」

狭い役場の中には役場勤めの男性数名の他に、もうひとり、村の人間がいた。
目鼻立ちの整った綺麗な女性で、胸に大きな白い封筒を抱えている。

「まさかセリーナ、あなたもっ……宮廷の使用人に志願するっていうの?!」

——見られていた。

セリーナ《《ごとき》》娘が、宮廷業務に志願する書類を受け取るところを。



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