《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜

「その白い封筒、志願書じゃないの……?! とうとうその気になったのね。お母さん嬉しい!」

台所を放り出し、セリーナを思い切り抱きしめる。
そんな母の喧騒に「お姉ちゃんどうしたの?」と弟のルカまでが居間から顔を覗かせた。

「あなたには、できればこの村にとどまらずに、もっと広くて明るい世界を見て欲しいの。私は……お母さんは、そうしたくてもできなかった。だからあなたには……」

セリーナと同じ、碧色(みどりいろ)の目。
子煩悩で、父親とこの村が大好きなはずの母親がそんなふうに思っていたなんて考えたこともなかった。

「お姉ちゃん宮廷に行くの?! すごーいっ!!」

可愛い弟は十歳になったばかりだ。
年齢の離れた姉を心から慕っているルカは、宮廷という言葉を聞いて父親譲りの青い瞳をきらきら輝かせている。

「それにね、セリーナ。お母さんは……宮廷での生活が、あなたを変えてくれるかも知れないって、思うの。(ここ)には存在しない、あなたにとって特別な《《何か》》と、出逢えるかも知れない」

——お母さんは、私が使用人に採用されるって、本気で思っているの……?



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