《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
自室に戻ったとたん、こらえていたものが一気に溢れ出した。
大きな封筒を抱えたまま号泣してしまう。
——薔薇園になんか行かなければ良かった。
役所になんか行かなければ良かった。
書類が入った封筒を乱雑に机の端っこに置く。
三日後の期限が過ぎてしまえば、捨てたって母親は何も言わないだろう。
——そう、役場で会ったあの子が言った通り。
私なんか何にもなれる筈がないのだから。
公募に出願などしない。
今年も来年も、その次だって同じよ……ダメに決まっているもの。
選考に落ちたという新たな汚名はすぐ狭い村中に広まり、彼女を馬鹿にした子達は笑いの種が増えたと喜ぶだろう。
セリーナは、彼ら若者の鬱屈の捌け口なのだから。
——これ以上恥をかきたくない……!