《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜

渡された書類の中にある一文を震える指で指し示す。セリーナの面輪(おもわ)はもともと血色が悪いのだが、驚きすぎて血の気の失せた頬は土気色をしていた。

「皇太子殿下の宵のお相手をする事以外にどんな意味があると言うのだ! これ以上の無意味な質問は控えるように!」

眉をひそめた侍従がセリーナの動揺など微塵も構うことなく二の句を継いだ。

——こ、皇太子って《冷酷無比》で有名な《《あの》》帝国皇太子殿下っ?!

オルデンシア帝国・第八代目皇太子——カイル・クラウド・オルデンシア殿下。

先の戦争で彼が流した血は計り知れない。
強靭な戦闘能力者でありながら剣技は帝国一・ニを誇り、どんな絶望的な戦いも勝利に導く美貌の天才。
冷徹な気質で逆らう者に容赦はなく、帝国を維持するために彼が殺した者の数は数百名とも云われている——。

——そんな恐ろしい人の宵のお世話だなんて。そんなの全然、聞いてません……っ!



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