《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
涙目になってがくりと肩を落とせば、セリーナの様子を見ていた隣の席の令嬢がくすりと笑った。
自分は笑われるようなおかしな事を言っただろうか。いや、むしろ真っ当な質問をしたはずだ。
——な、何が可笑しいのですか? 見ず知らずの男性と夜を過ごすのですよ?! 見ず知らずって言っても皇太子殿下ですけど……皇太子殿下でも何でも、好きでもない男性とですよ……っ!?
この宮廷では夜伽を業務化しているのか——にわかに押し寄せた妄想にゾッとする。
セリーナがわたわたしていると、隣の令嬢がまたくすっと笑った。
「あなたってば、何も知らないのね?」
年齢は十九歳のセリーナと同じ頃あいの、穏やかで落ち着いた物言いをする美貌の女性だ。
しかし納得のいかないセリーナは精一杯の反発を試みる。
「でっ……では他の皆さんは、この鬼畜な職務をご承知の上で志願されたとでも……?」