《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜

——アリシアが選ばれた理由は考えなくてもわかる。
でも、どうして私なんかが最終選考まで、しかも《上級侍女》の役職に通過しちゃったの……?!

セリーナの《採用》はどう考えても腑に落ちない点ばかりだ。

村役場で「何にもなれるはずがない」とセリーナを罵ったあの美貌の少女は書類選考すら通らなかったという。
ロレーヌの村の他の志願者十数名のなかでも、書類選考を通過したのはセリーナただひとりだ。

二次選考の面接では、まるで美しさを競うような場所でセリーナは化粧っけもなく髪を無造作にまとめただけ。
着ているものも古くさくて垢抜けず、選考会場で明かに悪目立ちしていたのだった。

「それで、あなたのお名前は?」
「セリーナ・ダルキアと申します。私……能力は持ち合わせていないのです」

アリシアはとても綺麗な女性だ。しかも万人に望まれる治癒能力者でもある。
上位貴族の妻にと切望されても不思議ではない。なのに適齢期(一般的には十六歳から十八歳)を過ぎるまで嫁がずにいたというのだろうか。

——アリシアのような女性(ひと)が、皇太子の《《餌食》》になるのを自ら志願したというの……!?



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