《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
「私は数年前にも皇城で侍女をしていましたから。もちろん上級侍女ではなかったですけれど」
「白の侍女って言われても正直まだよくわかりませんが、アリシアは堂々としていてとても素敵です」
「ふふっ、ただ気が張っているだけよ。でも私にわかることなら何でも聞いてくださいねっ」
ふわりと優しく笑んだあと、茶葉に視線を戻したアリシアは呟くように言う。
「実は私……前回の任期を終えてから何度も志願をして、やっとこの職務に就けましたの」
——このアリシアが、何度も志願……?
宮廷侍女の経験を持ち、治癒能力もあるアリシアが何度も志願したなんて。
村の若者たちの言葉を借りるなら『セリーナ《《ごとき》》が』一発採用された理由がますますわからなくなってしまう。
「宮廷侍女として奉公するうちに、いつか白の侍女になって、皇宮で皇太子殿下にお仕えできたら……って、思うようになって」
アリシアは遠い目をしている。
「でもっ、宵のお仕事つきですよ……?!」
そんなものにずっとなりたかったのですか。
思わず口から出そうになった問いかけの言葉を、ぐ、と飲み込んだ。