《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
「今日から皇宮にお仕えする事になった侍女です。所用に向かう途中でここを見つけて……とても綺麗だったので、つい足が向いてしまって……っ」

 宮廷に従事する者なら、ふりふりのお仕着せを見ればセリーナが侍女だとわかるのだろう。少なくとも怪しい侵入者だとは思われていないようだ。

「白の侍女だな。顔を上げていいぞ」

 言われるままに視線を上げれば、青年の面輪が柔らかに微笑んでいた。
 サワサワ……噴水から流れ落ちる水音《みずおと》がセリーナの耳に届く。

 ——きれいな人……っ

 額にかかる白銀の髪の合間から意思のある精悍な眉が覗いている。
 冷たい光を放つ淡いブルーの瞳、高い鼻梁と引き結ばれた口元。
 眉目秀麗を絵にしたような面立ちは男性といえども美しく、もう少し表情が柔らかければ女性ともみまごうほどだ。

 ——宮廷には、こんなにきれいな男性《ひと》がいるんですね!

 惚けていると、青年が指先で自分の隣をトン、トンと叩く。
 セリーナは思案した。

 ——ここに座れ、という意味でしょうか……?



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