《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
怖気《おじけ》づきながらも青年のところに行き、隣にそっと腰を下ろした。
そばに寄ってみれば、この美麗な青年の体躯は離れて見ていた時の印象よりも大きい。おそるおそる見上げると、セリーナを見下ろす蒼《あお》い瞳とばっりち目があった。

ひゃっ……!
驚いて声をあげそうになる。

「宮廷入りしたばかりで気が張っているだろう。こちらの事は気にせず、ゆっくりして行け」

そう言って柔らかく微笑むと、青年は睫毛を伏せて再び本に視線を落とした。
紙面に注がれる真剣な眼差し。
青年がまばたきするたび、翼のような長い睫毛に光がゆらめいて……まるで何かに憑かれたように青年の横顔に見とれてしまう。

一匹のフレイアがふわふわとやってきて、青年の肩にとまった。野生のフレイアとは違って警戒心の無さそうな蝶には驚いてしまう。
青年も慣れているのか、肩で翅を開いたり閉じたりしている蝶には気にも留めず、じっと紙面を見つめたままだ。

——とてもじゃないけど、ゆっくりなんてできませんっ。こんなきれいな人の、お隣で……!




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