《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
「ここの蝶たちは人間が羽化させて、育てているからな」
「えっ……フレイアは人の手でも育てられるのですか?」

蝶を空中に放つと、青年はその姿を追うように宙《そら》を仰いだ。
セリーナは思う——この人は容姿だけじゃなく、一挙一動のすべてがきれいすぎる。

「ここにある植物は全て人間が育てている。花や蝶、このフレイアもだ。お前もここが気に入ったなら、好きな時に来るといい」

幻の蝶フレイアは、その生態が多くの謎に包まれていることで知られる。
フレイアを産卵、羽化させ、育てているなんて!
いったいどうやって——どんなふうに?

セリーナが思案に暮れていると。
青年は本を抱えて立ち上がり、セリーナに背を向けて歩き出した。

「あっ、あのう……!」

呼び止める声に、整った横顔が肩越しに振り返る。
フレイアの事をもっと聞きたいと、つい呼び止めてしまったのを瞬時に悔いた。




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