《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
「いえ、なんでもありません。申し訳ありません……っ」

動揺をごまかそうと、勢いよく頭をさげる。
お辞儀をしている間に長身の背中は緑の茂みの合間に消えていった。
青年が座っていた場所に、溢れんばかりの光と心地よい水《みず》の音《ね》を残して。

——ここはとても素敵な場所だけど……。
夜行性の『ガイム』のような私には、光が少し、眩しすぎます。

元気になるどころか意味もなく消沈してしまい、フレイアが飛び交う大空間を吐息とともに見上げた。
背後ではざぁざぁ流れる水音が耳にうるさい。一人きりになったとたん、音が大きくなったような気がした。

「そうだ……私」

離れ屋敷に行かなくちゃ!
皇后陛下をお待たせてしまっては大事《おおごと》だ。



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