《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
皇后陛下の頼みごと
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裏庭と呼ばれる場所に設えられた皇后陛下の『離れ屋敷』は、可憐な花々が咲き乱れる庭園の中央に静かに佇んでいた。
お屋敷というには小さすぎる箱型の建物で、皇后陛下は開放感のあるテラスに光を通す薄い天蓋のついた寝台を置き、ほっそりした身体を静かに横たえていた。
病でも患っているのだろうか。そばに白衣を着た女性の医官たちが三人も控えている。
案内係の侍女が耳打ちをしてセリーナの来訪を伝えると、すべらかな絹の夜着をまとった線の細い女性が医官の介添えのもとでゆっくりと身を起こした。
——痩せ細り、青白いその顔には血色が感じられない。
けれど薄いベールをかけたように白々とかがやく彼女の美貌は、病《やまい》に伏していても、まるで人ならざる者のように神々しく見えた。
侍女の許しを得たセリーナは寝台のそばまで歩み寄り、身を低くして頭を下げる。
「皇后陛下にご挨拶申し上げます……」