《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜

たどたどしい、形だけの拝礼で咎められやしないかと不安になる。
それでも正式な拝礼のしかたなど教わったことがないのだから仕方がない、と自分を慰めた。

それにしても、皇后陛下ともあろう『雲の上のお方』が皇城入りしたばかりの侍女に何の御用があるというのだろうか。
だいいち、セリーナという侍女の名が知られていた事すら不可思議だ。

それなのに、皇后陛下の薄い唇から紡がれた言葉は——。

「セリーナ……ほんとうに、あなたなの?」

消え入りそうなほどにか細く、けれど心地良い調べのように澄んだ声が頭の上から降ってくる。

「ずいぶん大きくなって……。さあ、頭をあげて頂戴? わたくしに、お顔をよく見せて」

——お顔を見せて。
皇后様は、この醜い顔をごらんになってどう思われるだろうか。
せめて髪だけは人並みに整えてもらえて良かったと、アリシアに心根で感謝する。




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