《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
「昼までに『鹿角の間』にこれを届けておいてくれ。南棟三階の執務室だ、わかるな?」
厳封された封筒を、男性らしい筋張った手がセリーナに手渡す。
「は、はい! 承知いたしました」
頼んだぞ。
彼はスマートに微笑むと、回廊の先へと小走りに去っていった。
——こっ、皇太子殿下に、私もとうとうお目にかかれましたよ……!
アリシアのお話通り美丈夫な方ですね。噂に聞いているような、冷徹無比な人には見えなかったですけど……。
——では、宵の業務はあの方と……?
沸き起こった妄想に耐えられず、赤面してしまう。
こんなことではダメだ……ちょっと話したくらいで火照《ほて》っていては!
現実の《仕事》は、想像よりもずっとリアルで苦しいものに違いない。