《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜

恋するココロ



その日は突然にやってきた。

「では行ってきますね」

まるで近所に買い物にでも行くかのように、アリシアは笑顔で部屋を出た。
侍従長から業務を言い渡された白の侍女は、午後十時きっかりにカイル殿下のご寝所に向かうのだそう。

アリシアが部屋を出てからというもの、このあいだ回廊で出くわした皇太子の美貌を思い、大切なルームメイトのアリシアを想い……二つの想い同士が重なりあってセリーナは少しも落ち着かない。

あの美貌の皇太子とアリシアが、肌を重ねるのだろうか。
気恥ずかしさで胸がいっぱいになり、頭をブンブン振って想像の雲をかき消す。

——お城に来てからすっかり妄想癖にっ。私が緊張したって仕方ないのに。




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