《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
First Battle ( セリーナ視点 〜カイル視点)
「待たせてすまない」
重厚な扉をバタンと閉め、青年はほとんど面倒くさそうに上着をはぎ取った。
「議会が長引いてな。で、お前はそこで何をしている?」
寝室の最奥、扉からかなり離れた窓際にある天蓋付きの寝台の端っこに、セリーナはかしこまった人形さながら静かに腰をかけていた。
「座っていないで、着替えを手伝え」
言葉と気迫から、青年が苛立っているのがわかる。
慌てて駆け寄るが、極度の緊張からセリーナの声はうわずってしまう。
「もっ、申し訳ありません……」
午後十時に皇太子の寝所に来てから、かれこれ一時間。
バスタブに湯を溜めたあと、寝台の上に座ったまま何もせずに待ち続け、うとうととしかけていたところを突然に眠気を裂かれ鼓動が跳ね上がる。
——不意を突かれました。
でも、この人は、誰……?