《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
《第一章》



帝都から遠く離れた、ロレーヌ地方のとある村——。
ダルキア家が所有する先祖代々受け継がれてきた小さな畑は、青々と茂った木々が立ち並ぶ林の(かたわら)にあった。

眩しい日の光が差す景色の中に、美しい蝶『フレイア』がふわふわ飛んでいる。
畑仕事の手を休め、セリーナ・ダルキアはその優雅な姿をぼんやりと眺めていた。

フレイアは野菜の葉っぱにとまったり、気まぐれに白い花の蜜を吸ったり。
淡いブルーと碧色(みどりいろ)で編まれた美貌の翅《はね》を、光の中にキラキラと煌めかせている。

——なんて綺麗なの。

セリーナは憧れに似た眼差しで蝶を見つめ続けていた。
あのフレイアさえも精一杯に飛んで、生きて、あんなに美しくかがやいているのに。
なのに……自分は。



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