《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜

首を傾げながら見上げていると、斜め下から刺さる視線に気付いた青年が肩越しに振り返り、セリーナと初めて目が合った。

「……ン?」
「ぇ……?」

皇后様から離れ屋敷に呼ばれたあの日。
光溢れる温室でフレイアを見つめる宝石のようなブルーの瞳を、セリーナは忘れることができないでいる。
セリーナの目の前にいるのは、間違いなくあの時会った青年だ。

——もしかして、この人が——。

「あの……皇太子殿下、ご挨拶が遅れてしまいまして……」
「挨拶など求めていない。それより、湯浴《ゆあ》みの支度はできているのか?」

「 ぁ……はっ、はい」

——カイル皇太子殿下……!

薄暗い照明に照らされた広い背中に影が差す。
温室の明るい日差しの下で見るのと打って変わり、まるで彫刻のような筋肉が滑らかな曲線を描くさまは艶《なまめ》かしく、端正な顔立ちに似合わず鍛えられた背中から目を離せない。

「何を見ている?」
「ぁあ、いえ、その……」

——惚けている場合ではないわ。それにこれ以上粗相を重ねたら、皇太子殿下をもっと苛立たせてしまう。

「湯浴みをしてくる」
「ゆ、湯浴みですね。承知いたしました」

——皇太子殿下の湯浴みの手伝いって、何をすれば良いの?!
 



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