《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
わたわたするセリーナを気にも留めず、半裸になった皇太子は気怠げに湯殿《ゆどの》に向かう。だが途中で、何かに気付いたように振り返った。
「新しい侍女だな。覚えておけ、わたしに湯浴みの介助は不要だ。一人でゆっくり浸かりたい」
皇太子が湯殿に消えたあと。
ひとまず安堵したものの、セリーナの頭は混乱していた。
湯殿から漏《も》れる打たせ湯の音。
フレイアが飛び交う噴水の袂《たもと》でセリーナが魅了された、あの青年の横顔を思い浮かべる。そして回廊で遭遇し、セリーナが皇太子殿下だと思い込んでいた黒髪の青年のことも。
——どうやら私、大きな勘違いをしていたようですね。
なかなか切り替えられず首をかしげていると、「おい!」湯殿から怒声が響いた。
——私、また何かやらかしましたか!?