《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
見ると髪に泡をくっつけたままの皇太子が、湯殿からひょいと上半身を覗かせた。
——泡が付いていても、きれいなひとの濡れ髪は絵になりますね……!
なんて考えてる場合ではない。
「はい、何か?」
呑気に微笑むセリーナを見て、皇太子は「もっと慌てろ」と言いたげに額に手をあてて項垂《うなだ》れる。
「湯が無臭だ、精油が入っていない」
「せ……せいゆ、ですか? それは必要なものなのですか? どこにあるのでしょう、探してすぐに入れますから」
皇太子はムッとした表情《かお》をして、「もう良い」ひとこと放つと再び湯殿に引っ込んだ。
——温室でお会いしたときは穏やかな印象でしたけど……やっぱり怖いかもっ。