《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜

寒気がして身体が震え、指先が冷たくなる。

——でも怯《ひる》んではいけません! 
私のことも覚えていらっしゃらないようですし、笑顔を絶やさず……!
このあと何をされても、心を無にするのよ、セリーナ。
無心! 無感情っ!!

畏れと不安とをかき消し、必死で気力を奮い立たせた。
あの美しい皇太子を前に、自分は今夜、いったいどんな醜態をさらしてしまうのか。
次々と押し寄せてくるそら恐ろしい妄想を、懸命に心の奥底に押しやった。



* 



精悍な形の良い眉をひそめ、皇太子カイル・クロード・オルデンシアは広々とした湯船にゆっくりと身を沈めた。
今日も疲労を重ねる一日だったと想いを巡らせれば、おのずと「はぁ……」と声が漏れる。




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