《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜

「ありがとうございます。はい……能力は持っておりません」

彼女の返答を聞いて目を眇める。

——能力を持たない白の侍女がいるのか。
ではどうやって、ボイラーも無い俺の寝所の湯殿に湯を張ったんだ。

問いかけが頭を掠めたが、そんなことよりも眠気と疲労感がうっそりとのしかかる。
とにかくさっさと済ませて早く眠りに就きたい。
訝しみながらもその一心で寝台に向かうと、吐息にも似た、やる気の無い声を絞り出した。

「……始めようか」



< 85 / 112 >

この作品をシェア

pagetop