《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜

帝国皇太子の憂鬱


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 カイルは呼吸を荒立てた侍女を冷ややかに一瞥(いちべつ)し、グッタリ横たわる白い身体に背を向けて立ち上がった。

「湯浴みをする、もう下がれ」 

 冷徹さを孕んだ(うつ)ろな目で侍女を見下ろす。
 こんな事がずっと続くのかとウンザリし、妻をめとればとも考え、結婚したとしても妻とこんな関係性を保つのかと思うとゾッとして。
 そのジレンマは輪廻(りんね)の如く脳裏を巡り、結局のところ答えが出せない。

 湯殿に向かい、湯の中にゆったりと身体を沈めた。
 侍女が退室したあとの部屋には、疲労感と虚しさしか残されていない。

 こんなふうに誰かを抱く行為は帝王学の一つとして(たしな)みを学んでいた頃とは違い、今は無意味だ。
 第八代皇帝が、異常なほど好色であったという皇太子のために決めた(なら)わしが尾を引く今もなお、毎年のように新しい侍女が皇宮に招集され、彼女たちは皇太子の夜伽の《責務》を果たそうとする。

 ──俺も《責務》を果たすだけだ。

 

 
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