《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜

 意味が無くても、目指すものがわからなくても、夜は容赦なくやって来る。
 宵の責務は十三歳で初めて女性を経験して……いや、経験《《させられて》》から今日まで、週にニ度ほどのペースが守られていた。
 なかには毎夜のごとく夜伽侍女を呼んだ先祖もいたそうだが、考えただけでゾッとする。

 淡白にシゴトをする侍女がいれば濃厚に求めてくる者もいて、どんなタイプであっても必ず絶頂を与えてきた。

 侍女が皇太子の子を懐妊する『禁忌』を避けるため、侍女と《繋がる》ことは許されない。
 カイルはそれ故に最後まで経験したことがない──名前も知らず、なんの興味も持てない相手との行為に喜びを感じることもなく。ただ淡々と快楽を与えるのみだ。

 ──かつて、『禁忌』は破られてきた。
 先祖たちがみなカイルのように真面目だったとは思えない。
 名ばかりの禁忌など簡単に破られ、侍女を孕ませた挙句、残酷にも秘密裏に処理された黒歴史があったはずだ。

 忌み物でも見るように自分の指先を睨み、拳をグッと握りしめる。
 手早く、しかし相手の身体を傷つけずに終わらせたいと思えば、愛撫の手技は嫌でも磨かれていく。


 ──手技がどうであれ、この《《童貞が》》何を誇れる……?


 

 
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