《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
静寂のなか、天窓の月を見上げる──…
空の遥か彼方にある美しい月は彼の自室を白々《しらじら》と照らし、淡いブルーの瞳に今夜も優しい光を投げかける。
月はどれほど手を伸ばしても届かない、カイルが『至高の領域』と呼ぶものだ。
それは彼が煩悶し続けながら長年求め続けるものと重なる。
「あの月のような《女神》が……。俺の心を照らしてくれる女性が、この世界のどこかにいるのだろうか」
──そういえば。
数日前に初めてやってきた、《《おかしな侍女》》の事を対極的に思い出す。カイルの腕を跳ねのけて、厭な虫でも見つけたかのように飛びのいた……あの変な侍女の事を。