《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
初めての情事を怖がって泣いたり、身体をこわばらせたりするのはわかる。
それは女性として可愛げがあるというものだし、だからこそ恐怖を与えるのではなく、一人一人を丁寧に扱わねばとも思う。
──いや……あの侍女の場合、明らかに俺に対する『拒絶』だった!
愛らしく《啼く》どころか素っ頓狂な声をあげるし、大声で叫ぶ。
そもそも自分が何をしに来たのかさえわかっていない様子だった。
──あの侍女も自ら志願して来たのだろう?
形良い眉をひそめ、カイルはムッとする。
──俺の寝所に来る《白の侍女》はそれなりに選別されてるんじゃないのか。
誰が寄越したのか知らないが、あそこまでの素人は初めてだ……!
翌朝、カイルが朝食を取っていると、彼の執事アドルフ・シャニュイがやってきた。
清潔感漂う黒髪、溌剌とした精悍な面立ちから印象づけられる聡明さ。
明晰な頭脳と律儀な性格を買われ、叔父である皇帝からの推薦と本人の強い希望により、公爵位を持ちながらも皇太子の執務役に就いている。