《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜

 ロイスが真鍮の椅子をガタガタいわせながらテーブルに着くのを、「いつもながら騒がしい奴だ」とアドルフが一瞥(いちべつ)した。

 食いしん坊のロイスは帝国警吏騎士団の騎士団長で、皇太子カイルの直属の護衛官でもある。
 二十二歳の彼は溌剌(はつらつ)として、整った顔立ちは一見すると名門家育ちのおとなしい子息タイプだが、実は固有能力の使い手である家系に育ち、剣を握らせると右に出るものがいないと言われる実力者だ。

「これ、俺が食ってもいいですか?」
 相手の返事を待たずにたまごサンドウィッチをつかんで頬張(ほおば)った。

「ロイス、ダカールの状況は? 視察に赴いたのだろう?」

 さっさと飲み込め! と、アドルフが水を手渡せば、ロイスはモゴモゴさせていたものを喉に流し込んで、

「あ〜、それがよくわかんなくて」
「どういうことだ」
「農民が何人か行方不明になってるんですけど、ダイアウルフが関わってるかどうか」




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