《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜

「今日、《匂い》がキツいですよ? わたしの身体にまで波及していると、周囲からも指摘が」
「確かにっ。なんかこの一帯が《《殿下くさい》》って思ってたんですよね。香水、つけ過ぎ!」

「そうなのか?!」
 カイルがクンクン腕に鼻を近づけて自分の匂いを確かめた。

「珍しく寝過ごして、急いでいたからな……」

 ロイスが四つ目のサンドイッチをつかみ取る。

「ごちそ〜さまでした〜っ!」

 見れば、アドルフの皿が空っぽになっている。

「お前はッ……全部食べたのか?! 食い物の恨みは凄まじいと知っての所業かッ!」

 胸ぐらをつかみ合う二人を横目に見ながら、カイルは口元にかすかな笑みを浮かべてティーカップのお茶を啜る。

 ──ダイアウルフ……か。事態が大きくならねば良いが。





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