《新装・R15版》夜伽侍女が超絶鈍感を貫いたら、皇太子の溺愛が待っていました〜蟲姫は美しい蝶に夢を見る〜
「と、とにかく……奥に入って座れ!」
皇太子の声色は今夜も荒々しい。
セリーナの華奢な肩は恐怖でびくんと震えたが、ここで引き返すわけにはいかないのだ。
──それに殿下の裸の背中っ……前を歩かれると目のやり場に困りますね? 今後のことを考えると、できるだけ《業務前》の緊張は避けておきたいですっ。ここは勇気を出して……!
セリーナは無理からに精一杯の笑顔で声を絞り出した。
「あの、皇太子様。これからは何か上着をお召しになってくださいませんか? 心臓に、悪いので」
変わり者確定の侍女に何を言われたのか理解が及ばず、カイルは目を丸くしてゆっくりと振り返る。
「……は?」
*
心臓に悪いとか意味のわからぬ言葉に苛立ちながら、カイルはセリーナをベッド脇のカウチに座らせ、自分も隣の肘掛け椅子にどかりと腰を下ろした。
ここで腹を立てている場合ではない。落ち着いて話をするのだ。
「あのな……お前に聞きたいのだが」
「はい! なんなりとっ」