大切なきみがいつまでも幸せでありますように

2.

 神社まわりはたくさんの出店でにぎわっている。
 わたあめの甘い香り、とうもろこしの焼ける香ばしいにおい。
 金魚すくいではしゃぐ子どもたちの声。
「けっこう人集まってんなー」
「うん――」
 ほんとうににぎやか。
 夏祭りに来たのなんていつぶりだろう。
「なんだよ凪沙、今日おとなしくない? もっとしゃべんなよ、せっかく久しぶりに会えたんだし」
 
 そんなこと言われても。
 ドキドキして、うまく言葉がつむげない。

 あたしと拓海は中学二年生の冬からつき合いはじめた。
 いつも明るくて、拓海のそばにいるといつも元気になれた。
 だけど、あたしたちはいつもいろいろすれちがいがあって。

 去年は高校受験の勉強や、拓海の所属しているサッカー部の試合の時期が重なったりして夏祭りを楽しむ余裕なんてなかったんだ。
 おまけに拓海はサッカーの強豪校に進学を希望して、あたしとは別々の高校に。
 拓海が志望校に合格するのは応援したいけど、離ればなれになるのはさびしいなって思ってた今年の初もうで。

「今年はふたりで花火大会に行こう。約束な!」
 合格祈願のあと、そう拓海が提案した。
「ふたりで?」
 クラスの子たちとみんなで行ったことはあるけど、ふたりでなんてはじめて。
「夏祭り、去年は行けなかっただろ? それに今年は、ちょうど凪沙の誕生日と開催日が重なるじゃん」
「いいけど……」

 うれしいのに、どうしても素直になれなくてついそっけない態度になるあたしに、拓海はホッとしたように笑顔を浮かべて。
「なぁ、知ってる? 姉ちゃんが言ってたけど、この神社って縁結びの神さまなんだ。ここで待ち合わせして花火を見たふたりは、おたがいずっと幸せになれるんだって」
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