大切なきみがいつまでも幸せでありますように

5.

 二か月前、拓海はサッカー部での練習中に倒れて、数日後に帰らぬ人となった。
 脳出血だった。

 拓海がいったい何をしたっていうの。
 念願のサッカーの強豪校に入れたのに、真面目に練習にも取り組んでたのに。
 なんて残酷なことをするんだろうと、あたしは神さまを恨んだ。
 ずっとずっと泣き顔のまま、笑顔なんて作れなかった。
 しばらくどこへ行く気もしなかった。
 だけど、せめて今日だけは、今日の花火大会だけは拓海との約束を守ろうと、待ち合わせの神社に、ひとりで出かけてみたところ、心臓が大きく高鳴った。

 そこに拓海がいたから。
 生きていたときとまったく変わらない、元気な姿で。

「うぅ……」
 思い出すだけで涙があふれて止まらない。胸がすごく苦しい。
 拓海の言うとおり、
「会いたかった!」
 って、笑顔を浮かべればよかった。
 もっと、うれしいって伝えればよかった。
 でも、拓海、ほんとうにいつもと変わらないんだもん。
 亡くなったなんてほんとうは悪い冗談で、明日もあさっても、ずっといっしょにいられるとかんちがいしちゃったじゃない。
 花火みたいにパッと鮮やかな印象だけ残して、はかなく消えちゃうなんて、そんなの、そんなのイヤだよ……。
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